令和のキャリアを考えるブログ

【新卒採用】日本は、「狐と狸の化かし合い」の就職活動から脱却せよ!

今回は、新卒採用に関するコラムとなります。

1.新卒一括採用への疑問

まずは、三井物産の新たな選考方法に関する記事を見て欲しい。

https://www.onecareer.jp/articles/1188

三井物産と言えば、五大商社の一角、誰もが知る難関企業である。商社の採用倍率は200倍とも言われ、内定率は1%以下。当然、東大早慶を中心としたハイレベルな学生が集う戦場である。なぜその三井物産が、「3回の面接で学生を見切るのは難しい」と公言し、合宿採用を導入、しまいには海外や日本の地方にも入り込み、保護者にまで会社説明をしたいと言っているのか。これは、三井物産レベルの会社であっても、現在のオーソドックスな採用制度に疑問を感じていることの表れ、さらに踏み込むと、「本当に欲しい学生を採用できていない」ことへの危機感なのであろうと思う。

確かに、と思う。シンガポールへ来てから、日本人留学生向け合同企業説明会へ足を運んだ(ちなみに転職目的ではなく、大学側スタッフの1人としてである)。面接ブースで、「私の強みは○○力です」「私は納豆のように粘り強い人間です」「塾の先生として、生徒の成績を上げました」このようなフレーズを何度聞いたことか。聞けば日本の大学のキャリアオフィスに自己PR文を添削してもらっているのだという。「いや、その答えは正しいが、企業の求めている答えではない」と何度思ったことか。

就職活動の面接は、さながら狐と狸の化かし合いのようである。企業は「ダメだ、こいつ」と思っても「うんうん、なるほどねー」「一緒に働きたいよ」と満面の笑みを浮かべる。面接官は当然社会人、多くは人と接することに長けた人が選ばれる。それくらいの仮面は簡単に被る。学生はお客様の1人だ。嫌われればブランドイメージが崩れる。ましてや今は学生全員がSNSでジャーナリスト(情報発信者)となる時代だ。「あそこの面接官、マジ無愛想で最悪」とでも書かれようものなら、たちまち面接官が特定され、次に面接官を待っているのは役員からの査問である。

対して学生は、熾烈な受験勉強(といっても日本の受験勉強の厳しさは高が知れているが)の反動からか、大学でモラトリアムを謳歌する。通勤で高田馬場を使っていた時は、「都の西北」でも歌いすぎたのだろうか、時計台で寝ゲロにまみれてうずくまる某大学生をよく目撃したものだ。大学3年くらいになって、就職活動?うぇーい!ワンチャンあるっしょ!と言い、会社説明会で質問もせず名刺もねだらず、OB訪問で会社のことを1から10まで質問し、1次面接で敗退していく。対して、俗にいう「意識高い系」は、インターンに精を出し、覚えたExcel表計算を実績としてひっさげ、「他の学生と違い、ビジネスに詳しいです!活躍できます!」と見下し口調で語り、面接官の失笑を買う。

ここに介在するやっかいな存在が「大学」「(一部の)就活支援企業」という存在である。大学は、未だに「学生の本分は学業」「就職実績の向上」という二律離反の狭間で揺れ、授業のクオリティも中途半端。就職支援にも大幅な予算を割かない、という何とも日本的な経営を行い、結果、ろくに就活市場も知らない大学職員により添削されたESが世に出回って行く。一部の就活支援企業は、「君は素晴らしい学生だよ!」と学生を洗脳、「これからの時代はビジネスインターンをやらないとね」と提携企業との「パッケージ商品」を売りつけ、キックバックを得る。学生は、支援企業が裏で「こいつ、何とか入れてやってもらえませんかねぇ、安くしとくんで」と企業にゴマをすっているのにも気付かず、自分は選ばれし民だと勘違いしていく。

そして、一連の就職活動が終わった後に生み出される「合格体験記」「合格者のES・面接内容集」が、さらにこの芝居へ拍車をかける。そもそも受験と違って、合格・不合格の理由を企業は開示しない。にも関わらず、「笑顔でハキハキしゃべることが合格の秘訣です!」「体育会系だったのが好印象だったのか、合格しました!」など、論理性の欠如した、妄想にまみれた合格体験記が並ぶ。翌年からは合格者ESの模倣のオンパレード。最も特をしているのは出版社であることを誰もわかっていない。

2.学生側→企業の本音を知る

それでは、学生・企業側の歩み寄りを促すにはどうすればよいのか。

 学生はまず、企業の建前と本音を見抜かなければならない。企業の本音は以下のとおりである。

 企業は優秀な学生を他社よりも早く囲い込みたい。採用セミナー、会社説明会インターンシップ、OB訪問は全て優秀な学生を青田買いするためのプロセスである。

 企業活動の目的は利潤の追求である。利潤追求とは金の亡者になり、押し売りをすることではない。より安く、クオリティの高いプロダクト(サービス)の開発を行うことだ。顧客からの評価・信頼の数値化と言っても良い。利潤があるから、従業員の給料を賄えるし、株主や銀行も満足させられるし、再投資をしてさらに良い製品を生み出せる。利潤がなければ何も生まれない。したがって、「利潤」を生み出せる学生を求めている。逆に、金を稼ぐことに抵抗のある学生はいらない。

 もう22歳なのであれば、最低限社会人とTPOに合わせた会話ができる能力は持っていて欲しい。もちろん無礼は論外だが、常に形式張って畏む必要もない。場の空気に合わせた振る舞いのことである。もう少し言うと、OBには自分から必ず会って生の声を聞いて見てほしい。LinkedinやFacebookで会社名を検索すれば、仮に同大学でなくともOB訪問などいくらでもできる。

 会社を訪問するのであれば、最低限、会社概要を読む、関連ニュースを読む、業界のホットな話題を抑える等の知識をインプットして欲しい。これだけインターネットが発達している時勢、30分もあれば一通りのことは学べるはずだ。その前提となる会計や財務、経済や経営、マーケティングの知識もある程度は知っていてしかるべきだ。営業部に配属されて、取引先を訪問するのに、会社のことを調べないで訪問する社会人はいない。最低限の「礼儀」と言っても過言ではない。

こうした企業側の本音を知っていれば、就職活動におけるスタンスの取り方も変わってくるであろう。

3.企業側にも変革が必要 

そして、当然企業側も変わらなければならない。いい加減、高度経済成長期に作られた、日本が経済成長を続けることを前提とした枠組みを切り離すべきである。具体的に、私が主張したいのは以下の点である。

新卒採用の年齢条件等緩和

学生にとって、就職に対するレディネスが整う時期は異なる。金太郎飴のような、年齢や大学年次をベースとした選考要件は、モラトリアムを強制終了して社会人に変えてしまう、という点においては合理的だが、逆に、まだ未熟な学生、社会人としての目標が明確でない学生も世に送り出されてしまう。

逆に、卒業後のインターンシップ、アルバイト、海外放浪等を通じて成熟し、目標が明確になることもある。自分にとって最も納得できる時期に、新卒採用を受験できる仕組みの方が合理的なように感じる。

内定受諾前の、正社員と同待遇のインターン義務付け

そもそも活躍できるか否かを面接で見抜くのは不可能、かつ、採用後のミスマッチは会社・学生双方にとって良い結果をもたらさない。ならば、最終選考終了後、内定受諾までの間、正社員と同条件でのインターンシップを義務付け(もちろん残業等の労働条件や結果責任等も全て同じ)、インターンシップの結果および互いに対する評価を行なった上で、双方納得の上で入社、という方法はどうだろうか。

 

最後に、私が一番驚いているのは、私が日本人留学生向けで感じた「狐と狸の化かし合い」は、就職活動をした2008年に感じた違和感と同じであることだ。この10年、スマートフォンに端を発するテクノロジーの進化により、我々の生活は変わり、ライフスタイルや価値観も多様化した。ただ、こと就職活動においては、何かが変わったのだろうか。果たして日本の新卒採用は、このままでよいのだろうか。